第146話幸せな時に無理やり平手打ちさせないで

「もしもし、スミスさん……」

「え? まだスミスさんって呼ぶの? ダニエルって呼ぶって約束しただろう?」

問いかけながらダニエルは片眉を上げた。つるりとした声で、どこか意図的に人を惹きつける響きがある。電話越しでもエミリーはその吸引力をまともに感じ、耳の奥がむずがゆくなるほどだった。

エミリーはごく普通の人間で、彼の色気には抗いがたい。電話で話していて助かった、と彼女は思った。対面なら、頬の赤みで一瞬にして本心が露見していただろう。

「ダニエル、何か用? 体調のこと?」

住んでいる場所が近いのだから、体調のことでもなければ、わざわざ電話などせず直接来ればいいはずだ。

ダニエルだって...

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